スキップフロアのメリットとデメリット、注意点
マイホームを検討していると、「スキップフロア」という言葉を聞いたことがある人も多いかもしれませんが、具体的にどのような家のことをいうのでしょうか。スキップフロアのメリットやデメリット、採用する際の注意点などをご紹介します。
◼ スキップフロアとは
一般的な家では、1階と2階、3階といったように階層が階段で仕切られていることがほとんどです。スキップフロアとは、家の中の床の一部に高低差を付けて、中2階や中3階を作るような構造のことをいいます。1階と2階の間に半階分の高さの床が設けられているような状態であり、それぞれが数段の階段でつながっています。2階建ての高さの家であっても、実際には4~5層に分かれていることもあります。
一つ一つの部屋や空間を壁などで仕切るのではなく、段差によってゆるやかに空間が分けられているようなイメージです。階によって隔たりがあるわけではなく、廊下もないため、家全体が一つの空間であるのが特徴です。
◼ スキップフロアのメリット
実際にスキップフロアの家を見たことがなければ想像しにくいかもしれませんが、たくさんのメリットがあります。
・空間を有効に活用できる
狭い土地で十分な居住スペースを取ろうと思うと、階数を増やして高さを確保する必要があります。法律で家の高さを制限されているような土地や高低差のある土地に家を建てる場合には、スキップフロアを採用することで有効面積を増やすことができます。
スキップフロアの家では階段が多くなるため、その分階段下にデッドスペースができてしまいます。階段下のデッドスペースを収納として使用することで、空間を有効に活用できます。
・広く見える
スキップフロアの特徴として空間が仕切られていないことから、実際よりも家の中が広く見えるのもメリット。狭小地であったとしても、部屋と部屋の仕切りが少ないことや天井を高く取ることができることから、圧迫感のない設計になります。吹き抜けも開放的な空間を演出できますが、スキップフロアは吹き抜けよりもランニングコストを抑えることができます。
・家族との距離感
子供が大きくなると、関係性が難しくなってしまうこともあるかもしれません。スキップフロアの家では、家族と程よい距離感を保つことができるのもメリットの一つです。部屋と部屋の仕切りが少ない作りになっているため、家族とのコミュニケーションを取りやすいのが特徴。家族といえどもずっと同じ空間にいるのは苦しいという人もいるかもしれませんが、床の高さが空間ごとにずれているため、程よい距離を保つことができます。家の中に家族がいるという気配を感じながら、それぞれが違うことをして過ごすのも素敵です。
◼ スキップフロアのデメリット
スキップフロアの家にはメリットがたくさんありますが、デメリットもあります。採用を検討している場合はデメリットも考慮するようにしましょう。
・費用がかかる
スキップフロアの家を建てるデメリットとして、費用がかかることがあげられます。一般的な家と比べると、たくさんの材料を使用することや材料選びにも工夫が必要であることがその理由です。また壁が少ないということは家自体の強度が低くなる可能性があるため、耐震性を確保するためにもコストがかかってしまいます。
家を建てる際の費用も考慮する必要がありますが、実際に住み始めてからのランニングコストにも要注意です。スキップフロアの家は仕切りが少ないため、冷暖房の稼働で光熱費が高くなってしまう傾向にあります。
空間の使い方や音の響き方、採光の取り方など、設計や施工が難しいのもスキップフロアの特徴です。気を配らなくてはならないポイントが多いため、スキップフロアの家を設計した経験や実績が豊富な業者に依頼することをおすすめします。
・認められない自治体もある
家を建てる際には、設計書などの書類を持って自治体で申請を行わなければなりません。法律に則っているかどうかが審査されますが、スキップフロアの家は判断が分かれてしまうことを頭に入れておく必要があります。高さが1.4m以下で床の面積が2分の1未満であれば床面積として計算に入れないことが多いですが、床面積に入れて計算を行う自治体もあります。スキップフロアで2階建ての家にしたいと思っていても、3階建てとしてみなされてしまう場合もあるため注意が必要です。
またスキップフロアの家自体が自治体によっては認められない場合もあります。家を建てようと思っている地域においてスキップフロアを建てたことがある業者や、該当自治体のスキップフロアへの対応などに詳しい業者に相談するようにしましょう。
・固定資産税が上がる
スキップフロアの家は一般的な1階建てや2階建ての家よりも実際の床面積が広くなります。床面積はそのまま家の資産価値に直結するため、固定資産税が上がってしまう点がデメリットとなります。固定資産税は地方税の一つなので、自治体によって基準が異なります。地域の基準をしっかり確認した上でスキップフロアを採用するようにしましょう。
◼ スキップフロアの注意点
スキップフロアのメリットとデメリットが分かりましたが、実際建てる場合にはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。住み始めてから後悔することのないように、注意点の確認は大切です。
・断熱や空調
部屋を壁で仕切らないというスキップフロアの特徴から、断熱性を高めたつくりにする必要があります。暖かい空気は高いところに、冷たい空気は低いところにたまりやすいため、階による温度差が生まれることもあります。また空間がつながっていることから冷暖房の効率が悪くなることも。断熱性の高い材質を使ったり冷暖房などの空調設備を整えたりすることで、快適な暮らしを送ることができます。
・風通しや日当たり
スキップフロアの家を建てる場合、設計次第で風通しや日当たりの良い家になります。空間がつながっているため、家の中に入ってきた風が通り抜けやすく、太陽の光も入りやすいためです。スキップフロアは構造的に風通しや日当たりが良いつくりなので、家の向きや窓の位置を考えて設計することでより快適な空間が実現します。
・図面だけでは分かりにくい
スキップフロアは階ごとに間取りが決められるわけではないため、図面を平面ではなく断面で見ていくことになります。平面だけの図面では実際の空間がどのようになっているのかが分かりにくくなってしまいます。傾斜地などでは特に難しいため、スキップフロアを依頼する側が図面を見ても分からないことがあります。
平面の図面であれば業者から見せてもらった図面で間取りの良し悪しを判断することができますが、スキップフロアの場合は判断が難しいことに注意が必要です。完成してから「想像と違った……」といったことのないよう信頼できる業者に依頼することをおすすめします。
・バリアフリーとは逆行する
スキップフロアは数段の階段で空間を仕切るため、一般的な家よりも段差が多いのが特徴です。最近は老後のことも考えてバリアフリーの家を建てる人もいますが、スキップフロアはバリアフリーとは逆行するということを頭に入れておく必要があります。将来のことまで考えての決断であれば構いませんが、いざ老後を迎えてみて後悔するようなことがないようにしたいものです。また家を建てる時点で高齢の方や車いすの方などがいる場合は、スキップフロアのある家での暮らしは大変かもしれません。
◼ まとめ
スキップフロアとは、1階と2階の間に半階分の高さの空間があるような家のことをいいます。2階建ての高さの家が4~5層に分かれていることもあります。スキップフロアの家は空間を有効に活用できることや実際よりも広く見えることから、都心部の狭小住宅などで採用されることが多い構造です。空間を壁で仕切らないことから、家族とのコミュニケーションが取りやすいのもメリット。
その一方で家を建てる際の費用がかかってしまうことや、自治体によってはスキップフロアの家が認められない場合もあることを頭に入れておく必要があります。土地を決めてスキップフロアの家を建てると決めて、自治体に設計図などを提出してから却下されるといったことがあっては悲しいですよね。前もって調べた上で、各自治体の審査について詳しい業者に設計を依頼することをおすすめします。
ホームスタイリングでは、湘南や横浜を中心に注文住宅のデザインプランをご提案しています。家族が集まるLDK、光と風の設計、空間を活かした開放感とゆとり、がコンセプト。家族構成や立地、予算などを伺った上で、ご希望に沿いながら安全性やメンテナンスまで考慮した設計を行っています。ホームスタイリングで実際に行ったスキップフロアの事例をご紹介します。湘南や横浜で注文住宅をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
・ペットと家族が集う家
個性的なステップ状の屋根は、斜線規制を考慮しつつデザイン性も兼ね備えて考えられています。ペットと近くで過ごせるように、ペット用のスペースをダイニング横に設置しています。中2階には勉強用のスペースを設け、子供部屋、バルコニーまでが吹き抜けでつながっているのが特徴です。
・4層スキップフロアの家
LDKやキッチン、子供の遊び場であるロフトなど、家族の気配を感じながら過ごせるスキップフロアの家です。玄関を側面に設けることでプライバシーを重視し、大きな窓や天窓からの採光により明るく開放感のある家になっています。
・Private Café
吹き抜けや勾配のある天井、ルーフバルコニーなど、開放感あふれるつくりの家。スキップフロア下の収納には可動式の本棚が隠れています。また車を2台停められるほどの駐車スペースも完備されており、靴収納やコート掛けといった玄関収納も兼ねています。